マンドリンアンサンブル・オーケストラでの役割

 弦楽四重奏ではチェロは低音部を担っている。コントラバス・ダブルベースは名前のように古典的にはチェロのオクターブ下を演奏するなど低音の強化として用いられてきた。

 マンドリン4重奏やアンサンブルでは従来からギターがその役割を担っていたが、アンサンブルが大型化するにつれ、低音部の強化のためマンドロンチェロが使われるようになった。このため日本のマンドリンアンサンブル・オーケストラではマンドリン2部、マンドラ、マンドロンチェロ、ギター、コントラバスの6部が標準的な編成となっている。メンバーにマンドリンチェロが常駐している場合は古典的な編成の弦4部(マンドリン1,2、マンドラ、ギター)の場合にマンドリンチェロの楽譜を追加する。中野二郎は多くの弦4部にマンドリンチェロ以下の楽器を追加編曲している。

 この場合マンドロンチェロの使い方として以下がある。

1.アンサンブルのベースの役割

 マンドロンチェロの音域はギターのベース部分やコントラバスと重なる事が多い。ギターの6弦Eより低いDやC音の必要な場合にピッキングは有効だが、トレモロは弦暴れが起きやすいため、弱音での使用が望ましい。ヘ音記号を使っていることからベースの上に書かれることもあり、後から付け加えられることもあるためベースの使い方が多い。

2.マンドラと組み合わせて2声、または3声の和弦を取る。

 一般的なマンドリンアンサンブル、オーケストラではマンドロンチェロの人員はマンドラより少ないため、3声の場合はマンドラを上2声、マンドロンチェロ下1声としている。マンドラと同じ旋律を取ることもある。

3.独立したメロディーまたは副次的旋律。

 G線、D線主体のメロディーはマンドラよりも豊かな音といえる。

 マンドラのオクターブ下を弾くことも多い。最近の楽曲では最初からマンドロンチェロを入れているため、独立したメロディーまたは副次的旋律を取ることもある。また、マンドリュートとして書かれている曲は現在ではマンドロンチェロで弾かれることが多い。

4.マンドラと組み合わせた伴奏。これもギターと重なる事が多い

 ギターはトレモロを通常使わず、コードおよび単音で奏するため、マンドラやマンドロンチェロとの組み合わせる場合は使用法を考慮する。マンドロンチェロやマンドラがトレモロの場合、ギターはアクセントなどの強調で用いると良い。従ってマンドロンチェロはマンドラとセットとして和弦をとる、伴奏を共同して行うなどとなっている。編曲の場合にギターの低音はベース音として用いるのがいいだろう。

 

 マンドロンチェロの性能が上がってマンドリンアンサンブル・オーケストラに常駐するようになるとマンドラと重なり、作・編曲者としてはマンドラ・コントラルトを使いたいと思うかもしれない。しかしながら日本ではマンドラ・コントラルトは一般化していないためスコアに記入しても現状ではマンドラで代用することになってしまうだろう。