マンドロンチェロの奏法

音部記号と運指法

音部記号

マンドロンチェロの音部記号は低音部記号(ヘ音記号)を用いる。

  ヴィオロンチェロの高音では中音部記号(ハ音記号)や高音部記号(ト音記号)を用いることがあるがマンドロンチェロでは見かけない。それほどの高音部の演奏がないこと、奏者が中音部記号や高音部記号になれていないことが理由だろう。

 

 なお、リュートカンタービレの教則本ではト音記号も使われている。この場合はオクターブの移調記号となっている。

運指法

ヴィオロンチェロの弦長は69.5cm程度であり、マンドロンチェロの短いタイプの松島56.7cm、落合57.5cmを比較すると15%ほど短い。また、ヴィオロンチェロは両足の間に立てて使うため、腕の運動が楽であり、ハイポジションでは親指ポジションがとれる。マンドロンチェロはヴィオロンチェロ比較すると動きにくい。楽器もやや小振りとなっているため、対応している音程を出すには楽器の大きさは不足といえる。低音を出すために弦は太くなっており、トレモロのフォルテの場合に弦暴れによる雑音が出やすい。このため宮野マンドリンや松島マンドリンなど最近のマンドチェロではC線のサドルを高くして弦高を確保している。また低音部の複弦を押さえるのに小指は複弦の隙間に入ってしまうことがあり、使用が限定される。

最近はカラーチェ、宮野の61cm、大野の大型が63cmとやや大型のマンドロンチェロも作られている。

低音部を補充するために、より大型のマンドローネを利用するマンドリンアンサンブル・オーケストラもある。

ヴィオロンチェロの楽譜をマンドロンチェロに移す場合にこれらの違いを考慮する必要がある。

運指は基本的にヴィオロンチェロと同様に第1指から第4指まで指と指の間は短2度 のステップ半音階で奏する。

運指は基本的にヴィオロンチェロと同様に第1指から第4指まで指と指の間は短2度 のステップ半音階で奏する。

 C線の第1ポジションは下記のようになる。指の第1指(人差し指)から第4指(小指)までの距離は通常で短三度、で押さえていく。

 

半音階の組み合わせ(カラーチェ教則本No.36)

ポジション移動

第1指と第2指は伸長ポジションとして長2度を取ることが出来る。

基本のポジションでは第1指から第4指までは短三度であるため、弦と弦の間の5度よりも少ないため、マンドリンよりも頻繁にポジションを移動する必要がある。

ポジション移動の場合に通常はポルタメントをつけないが、必要な場合には強調することが出来る。

マンドロンチェロの高音

 カラーチェのリュート教則本は7ポジションまで書かれている。A 線では18フレット(オクターブと4度上)のD#が通常の最高音となる。最近の楽器は2オクターブ上までフレットが打ち込まれている。

 ヴィオロンチェロは高音の場合、親指ポジションをとるが、マンドロンチェロでは通常の押さえ方のため、7ポジション以上は困難であり、ヴィオロンチェロの楽譜を移す場合などでは注意しなければならない。

中世の吟遊詩人(アマディー) マンドロンチェロのメロディー

原曲は管弦楽なのでヴィオロンチェロを移していると考えられる。

ピッキング

 マンドリンやマンドラよりも弦が長いため音が伸びる。消音を確実にすることが重要。

トレモロ

 マンドロンチェロは低音で弦が長いためトレモロの適切な速度はマンドリンやマンドラより遅く、トレモロ数は少なくなる。このため8分音符や4分音符をマンドリンやマンドラと揃えようとしても無理なことがある。トレモロが速いと弦の固有振動とぶつかり、雑音となる。これはティンパニや大太鼓のトレモロと同様。(ティンパニのトレモロ参照)

ハーモニックス 

オクターブのハーモニックスは自然ハーモニックス、人工ハーモニックスとも効果的だが、合奏で使われている楽曲は少ない。

重音

丸本大悟の「願いの叶う本」からマンドロンチェロのソロ部分

マンドロンチェロの独奏曲

 マンドロンチェロ奏者でもある加賀城浩光ほか、桐山秀樹、肝付兼美などが独奏曲を書いている。独奏曲では重音奏法やハーモニックス音も取り入れられている。