打楽器

ティンパニ timpani(伊) timbales(仏) Pauken(独)

ティンパニの概要
 通常2つ以上で用いられる。古典時代は主音と属音に調律されるのが一般的であった。現在では3つ4つ使われることも多い。楽章の途中などで調律がえが行われる。
 ティンパニは主に銅で出来た半球形の釜を三脚または専用台に乗せている。釜には子牛の皮などが張られていて周辺の調節ねじにより音程を調節できるようになっている。最近はフットペダルによるものが一般的になっている。古典的な総譜にはティンパニの最初の調律が書かれている。動物の皮の膜(ヘッド)は湿気や温度に敏感に反応するため、扱いがむずかしく、プラスチックが主流となっている。
 奏者は自分のパートの楽譜を見てどの楽器を用いるか、調律をどう変えていったら良いか計画する。オーケストラ編曲者はある音がどの楽器で出されるのか、どのような調律上の問題があるか知っておかなければいけない。 図はYAMAHA TP-4300R

楽器の寸法
 通常のオーケストラでのティンパニの鼓面の直径と音域は次のようになっている。
 通常30インチから23インチであり、音域は重なっている。しかし各楽器の中音域で鼓面が緩められ過ぎず、引っ張られ過ぎてもいないときに最良の音質が得られることを考慮すべきである。たとえば低いFやF#の音は28インチの楽器より30インチのほうがずっと音質が良い。

棒(撥 ばち マレット)
 ティンパニ奏者は数種類の棒(撥)を使い分ける。手に持つところは木製だが頭部はフェルト、フランネル、綿糸、木、コルク、スポンジなど種々の素材で出来ている。また大きさも小型、中型、大型があり、堅さも様々である。木は最も堅く、スポンジは一番柔らかい。堅い棒は大きな音を出せる他、弱音のリズム音型をはっきりと出すことが出来る。柔らかい棒は温かい共鳴に富んだ音を出す。奏者は作品のスタイルや音楽的要求に最も適合した棒を選ぶ。作曲者が指定することもある。

打ち方
 通常両手は交互に打つが、各リズム音型は楽器1個の場合でも2個以上の場合でも、それぞれの条件により打ち方の順序が決まってくる。楽器は通常奏者の左側に低いピッチのものを置くように並べられる。また音符は実音で記されている。

 ティンパニは共鳴が大きいので奏者は絶えず指先で鼓面を押さえて振動の長引くのを止めなければならない。スタッカートで奏する音符ははっきり記しておく。
 ティンパニのトレモロはマンドリン系の楽器と同様に、単打を急速に繰り返すことにより作り出され、オーケストラの中で強力な効果を発揮する。トレモロはトリルのように記載されるが、その正確な長さを注意深く記しておかなければならない。

 a.では各音符ごとに鋭いアクセントを付けられ各トレモロの間にははっきり切れ目がある。4分音符は単打である。b.では小節の間にあるトレモロ間にある切れ目はアクセントを付けず、コントラバスの下げ弓上げ弓の変わり目のようである。c.ではトレモロはずっと続いており、第2小節の4分音符でアクセントなしに終わる。
 打楽器は全てあらゆるディナーミクの変化を浮き上がらせる能力がある。従ってこのディナーミクの変化は十分に計算され、できる限り明瞭に指示しておかなければならない。

オーケストラでの用法
 レギュラーオーケストラにおいてティンパニは総譜中に必ずと言っていいほど存在する唯一の打楽器である。
 マンドリンオーケストラにおいても50名程度以上の編成では利用することが多い。最も重要な役割はテュッティでの力を強めることであり、とくに低音を強め、色彩を与え、浮き立たせる。リズムの輪郭はティンパニを追加することによって隈取りを施されることになる。
弱音も様々なやり方で効果的である。例えば叩く点の反対側の鼓面上に布地またはハンカチを置いて弱音にする。

中村弘明のマンドリンオーケストラ曲、夕鶴にティンパニのソロがある。

 ホルストの惑星の例は4個のティンパニを一人の奏者が奏するソロのパッセージである。
 多くのティンパニを利用した曲として、ベルリオーズの幻想交響曲の田園にて、では4個の楽器を4人で演奏している。レクイエムでは10人の奏者が16個のティンパニを使っている。
ウォルターピストン著 管弦楽法等参照 バスドラム