マンドラの歴史
マンドラmandola または マンドーラmandora ともいう。ただしマンドーラ (Mandora) は通常6コースの弦とやや長いネックを持つリュート属の楽器をさす。
マンドラ(Mandola)の名称が初めて登場するのは1580年。フランスの音楽の本に新しい楽器として載っている。また同じころイタリアにもマンドラが登場している。当時のマンドラは5コースまたは6コースの単弦でリュートのような外観と構造をもっていた。
現在のマンドラは日本では左がGDAE調弦のMandola Tenoreマンドラテノーレ(マンドラテノール)、右はCGDA調弦のMandola contraltマンドラコントラルトと呼んでいる。ただし英語(米国)のTenor MandolaはCGDA調弦のマンドラコントラルトのことで、日本で言うGDAE調弦のMandola TenoreはオクターブマンドリンOctave
Mandolinと呼んでいる。
現在の形状となったマンドラはエンベルガー(Luigi Embergher) が1890年代に マンドリン弦楽四重奏のためにマンドラ(マンドリオラまたはオクターブマンドラとも呼ばれる)およびマンドチェロを作ったのが始めであり、1898年トリノでその四重奏が登場し、すぐに標準的なマンドリンオーケストラになったといわれる。当時エンベルガーは各種の撥弦楽器を製造している。
マンドラの調弦
日本の呼び方に従うとマンドラは低い方からG-D-A-Eの調弦で、マンドリンより1オクターブ低いマンドラテノーレ(オクターブマンドリン)と、マンドリンより五度低くヴィオラと同じC-G-D-Aの調弦で、やや小さいマンドラコントラルトがある。 両方とも弦は4コース8弦である。CGDA調弦のマンドラコントラルトは、日本ではほとんど使われていない。
通常、マンドラといえばイタリア、フランス、ドイツ、日本などではGDAE調弦のマンドラテノーレを指し、米国ではマンドラコントラルトのことを意味する。米国ではマンドラテノーレのことを通常、オクターブマンドリン(OM)と呼んでいる。米国のマンドリンオーケストラでは一般にフラット系のマンドリン、マンドラコントラルト、マンドチェロ、マンドバスが使われている。また、ケルト音楽でもマンドラが使われている。形状はラウンド(ボール)バックの他、フラットバックの涙型(ティアドロップ型)、F型(ギブソンのフラットマンドリンスタイル)、バンジョー型、ギター型などがある。
マンドラテノーレとマンドラコントラルト
日本のマンドリン合奏では一般にラウンド(ボール)バックのマンドラテノーレが使われており、マンドラコントラルトはほとんど見かけない。これはイタリアの古典四重奏と呼ばれる合奏形態であるマンドリン、マンドラテノーレ、ギターを組み合わせた合奏形式が日本で採用されたためである。ヴァイオリン族の弦楽四重奏と同様の形式はロマンチックカルテットと呼ばれるが、この形式はアメリカのマンドリンアンサンブルに取り上げられていて、現在でもアメリカでは一般にギターの入らないマンドリン合奏・オーケストラとなっている。また、バンジョーの入ることがある。
なお、これらマンドラ、マンドーラ、マンドラテノーレ、マンドラコントラルト、オクターブマンドリン、オクターブマンドラ、テナーマンドラ、マンドリオラなどの名称は欧米での地域や時代により意味が違っていて区分は明確ではない。
マンドラの音色と合奏での役割
音色は豊かで丸みを帯びたものであり、音域は人間の声域に大体相当する。
マンドリンとマンドラ(テノーレ)では1オクターブ違うため、和弦のためにはやや高音域を使うことが多い。また、音域的にマンドロンチェロの範囲に近く、マンドリンオーケストラにおけるマンドラはレギュラーオーケストラにおけるヴィオラとヴィオロンチェロの両方を担う役割といえる。
マンドラのサイズ
マンドラテノーレの全長は77~80cm、弦長43~44cm、胴の厚み17cm程度であり、材料や構造はマンドリンと同様。
ネックと胴のジョイントは通常10フレットだが、楽器によっては12フレットでジョイントし、ハイポジションが弾きやすくしている仕様のものもある。この場合、ボディの容量を増やすため、やや幅広くなっている。