マンドリンは弦による性格の違いがある。
一般に素材は鉄(高炭素スチール Hi Carbon Steel :HCS)またはニッケル合金(ステンレス)などで鉄弦の場合はメッキやコーティングで錆を防止している。
1コース(E)、2コース(D)は巻いていない通常の弦。3コース(D)、4コース(G)はワウンド(巻き線)
ワウンドの場合は丸巻き線(ラウンドワウンド弦)、半丸巻き線(ハーフラウンドワウンド弦)、平巻き線(フラットワウンド弦)の3種類がある。
これらの材質やワウンドによっても音色は異なるが一般的に1コース(E)、2コース(D)の弦はノンワウンドのため明るくシャープな音。ワウンド弦はやや大人しい表情となる。ラウンドワウンド弦は音の立ち上がりが早くて、比較的音色は明るめ。なおかつサスティンに優れている。フラットワウンド弦はサスティーン(音の伸び)や倍音は少ないが、甘めのサウンド。ポジション移動の際に弦を擦る音が聞こえない。ハーフラウンドワウンド弦はその中間。
ノンワウンド弦(1コースE、2コースA)とワウンド弦(3コースD、4コースG)の音色の違いは大きいのでメロディーなどでは弦をまたがないようにするとよい。
E線(1コース)は最も音が立っていて力強く輝かしい。ピアノ(弱音)で柔らかく弾けば明るく透明感のある音となる。(図)A線(2コース)は第1ポジションでは強いが、ハイポジションになるに従って輝きは減り柔らかい音になる。メロディックな楽曲ではE線に移らない方が良い場合が多い。D線は力が弱い控えめで静かな表現に向いている。G線は一般的に力強いのだがハイポジションは表情がなくなりしわがれ声のようになる。また1stマンドリンでG線をあまり弾かないでいると響かなくなる。G線のアクセントは力強い。(楽譜は古戦場の秋の出だし)
開放弦の音と指で押さえて出した音には音質に若干の違いがある。押弦ではヴィブラートをかけるとか指を離すことで音を止めるなどのコントロールをすることが可能だが、開放弦の場合はそういったことが出来ないため目立ちやすい。また開放弦と押さえた音では音程のズレが目立つことがある。
早い音型の場合は開放弦も用いる。開放弦を使わずに弾く場合に小指が7フレットを押さえるかハイポジションをとることになる。正しい押さえ方になっていないと小指が無理な形となり動きが悪くなる。
またヴァイオリンなどでメロディックなフレーズは開放弦を使わないのが一般的だが、マンドリンではあまり神経質になることはない。ヴァイオリンでは開放弦の音はナットと駒の間で音が出るが、押弦の場合は指と駒の間なので音質の違いが大きい。マンドリンの場合はフレットがあるため開放弦での音との違いは少ない。
指は通常、離す必要があるまでは現状に留め置かれる。トレモロだけでなくピッキングでもスラー・レガートを弾くには押さえた指を早く離してはいけない。
左図は第2ポジション、第3ポジション、第4ポジションと高いポジションに移動する場合を示している。このような音列は更に上まで続けることができる。ただし、低い弦では太さに比べ弦の長さが短くなってくるので高い音を出すことが困難になる。E線では7ポジションも普通のメロディーとして出てくる。3ポジションは初心者でもマスターすべきポジションである。
左の図は第1ポジションの指の位置を示す。
臨時記号の付いた音は通常、本来の音と同じ指で奏される。たとえば、G線上でA(ナチュラル)はA♭、A♯、およびG♯も第1指で奏することになる。
半音階順次進行の関係にある2つの音はポジションを確保するため通常は同じ指で奏される。しかし早いパッセージの場合は半音階進行の音にそれぞれ別の指を使うこともある。運指法の選択は音楽的考慮によって決定される。速いパッセージではb.よりc.の方がはっきりした演奏となる。
次の例は伝統的な運指法であり、ややたどたどしい感じとなる。
第1指が第1フレットの距離にあり、通常では第1指で奏する音を第2指で奏するようになる場合はハーフポジションといわれる。音の組み合わせによっては集中したようなポジションで弾いた方が運指は楽になる。
第1ポジションにおいて、左手の第1指から第4指の間を増四度または完全五度にまで広げることが出来る。高いポジションでは通常のポジションの範囲を超えて第4指を伸ばすことは良く行われる。
最もよく行われるポジション移動は第1ポジションから第3ポジション、第3ポジションから第5ポジションというように、三度のずらしを伴うものである。このずらしは通常第1指で行われる。